シナリオプランニングで気づく「灯台下暗し」なこと【Stylish Ideaメールマガジン vol.250】
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シナリオプランニングはアウトプットではなくインプットであるということは、このメールマガジンでも何度も取り上げています。
シナリオプランニングでは、シナリオ(アウトプット)をつくって終わりにしてしまうのではなく、つくったシナリオを元に(インプットとして)顧客や自社のことを考えるところまでを必ずやらなくてはいけないことを指しています。
そのように考えると、「シナリオプランニングは未来を考える手法」という言い方は必ずしも正確ではないことがわかります。
正確には「シナリオプランニングでは、不確実な未来の可能性を検討することをとおして、現在のことを新たな視点から見るための手法」と言うべきところです。
今月に入って何度か実施したワークショップでも、最後に、ここに書いたような内容の振り返りをしている人が何人もいらっしゃいました。
たしかに、シナリオプランニングでは、不確実で、かつ未来に影響を与えるような要因をリサーチし、それが5年後や10年後にどうなるのか、その可能性を検討するということをとおして、未来のことを考えます。
そして、それを元に顧客や自社のことを考えると、今までには考えたことがなかったような事業や自社の改善に関するアイデアが出ます。
しかし、出てくるのは未来のこと、今までには考えたことがなかったようなことばかりではありません。
不確実な未来の可能性をとおして考える中で、今すぐに取り組まなければといったようなテーマに気づかされることも少なくありません。
例えば、
- 対処しなければと思っていた既存顧客のニーズ
- 検討しなければと思っていた自社の既存技術の新たな活用の可能性
- 検討しなければと思っていたコロナ禍における働き方の見直しの可能性
というようなものです。
「イノベーション」といって、これまでには考えついたこともないようなことを考えることを目指すというのも大切なことです。
しかし、現在のような不確実な時代には、対処が必要だと一部の人が思っているものの、組織やチーム全体ではその必要性を同じようには認識できていないものについて、その必要性に気づき、具体的に動き始めることもイノベーションと同じくらい重要です。
そういう「灯台下暗し」な観点に気づくためにもシナリオプランニングは活用できるのです。
『実践 シナリオ・プランニング』
シナリオ・プランニングを活用し、自分たちの「シナリオ」を作成することで、過度に悲観的な予測に立って不安に飲み込まれることも、将来の可能性を過度に楽観視することもなく、「健全な危機感」をもって未来を捉え、将来に対する備えをしていくことができるようになります。
本書ではシナリオ・プランニングの理論的な理解はもちろんのこと、シナリオ・プランニングの「実践」をあらゆる組織で無理なく進めていくための方法論、さらには、シナリオ・プランニングの「実践」をもとに、人と組織の成長を促すヒントを解き明かします。