シナリオプランニングをとおして「ジョブ」を明らかにする【Stylish Ideaメールマガジン vol.246】
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今週はある素材系メーカーで、新規事業開発に携わっているメンバーの方を中心に、シナリオプランニングのワークショップを実施。
2日間集中、オンラインでの開催でしたが、グループワークもスムーズで議論も深まりました。
途中まで完成した各グループの複数シナリオを見て、「これは良い事業案が出るのでは?」と思っていましたが、期待を上回る結果になりました。
それぞれの方が専門とする分野を中心としてさまざまな事業案を出したあと、全体で議論をしましたが、本格的な議論が続き、実現性が高いものもいくつも出てきました。
もちろん、本当に実現できるかどうかは、これからの仮説検証のプロセスをとおして明確にしていくことになりますが、2日で一気に仕上げたシナリオから出た案としては、とても質の良いものばかりでした。
なぜ、このように良い結果が出たのでしょうか。
事前のリサーチがしっかりしていたという点や作成した複数シナリオが良かったなど、いろいろな理由を挙げることができます。
そういう中でも、今回特に良かったのが、複数シナリオを元にした顧客像とそのニーズを対話をとおして十分に深めることができた点です。
「シナリオプランニングに取り組んだのに、出てきた戦略オプションが、普段と同じようなものばかりだった」
という経験をした方は少なくないでしょう。
私もそういう場面に遭遇したことがありますが、そういう場合、往々にして、シナリオを踏まえた顧客像の深掘りができていません。
描いた未来を元にして、すぐに「こういう未来なうちの○○という製品を…」と、”今の”自社の枠組みで話を始めてしまいます。
これまで未来のことをずっと話してきたあとに、やっと今からの取り組みの話ができるとなれば、たしかに自社の話をしたくなる気持ちもわかります。
しかし、そこでぐっと我慢して、一足飛びに自社のことを考えるのをこらえて、顧客の未来像を考え続けることが大切です。
クリステンセン氏の理論を借用するのであれば、そういう検討をとおして、顧客が片づけたい「ジョブ」を明確にするのです。
そのステップに十分に取り組まないまま自社の対応を考えてしまうと、どうしても今の事業に引っ張られやすくなります。
そうではなく、まずは顧客像を明確にすることで、「その未来において、自社は何に取り組むのか」を明確にすることから始めます。
ここまでイメージすることができれば、現在の自社の製品やサービスにとらわれず、新たな視点から検討することができるようになります。
『実践 シナリオ・プランニング』
シナリオ・プランニングを活用し、自分たちの「シナリオ」を作成することで、過度に悲観的な予測に立って不安に飲み込まれることも、将来の可能性を過度に楽観視することもなく、「健全な危機感」をもって未来を捉え、将来に対する備えをしていくことができるようになります。
本書ではシナリオ・プランニングの理論的な理解はもちろんのこと、シナリオ・プランニングの「実践」をあらゆる組織で無理なく進めていくための方法論、さらには、シナリオ・プランニングの「実践」をもとに、人と組織の成長を促すヒントを解き明かします。