なぜ自分のテーマでのシナリオ作りから始めるか?【Stylish Ideaメールマガジン vol.182】
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弊社のシナリオプランニング公開セミナーは、今の時点では次のような体系になっています。
- 基礎編+実践編
- 応用編
- プロコース
基礎編、実践編は実際は別々の講座なのですが、現在は2日間でまとめてやることが多いので、このようにまとめて書くようにしています。
どの講座でも、実際に手を動かしてシナリオを作成することにしていますが、それぞれの講座でシナリオを作成するテーマを変えています。
具体的には、
- 基礎編+実践編:自分が関心あるテーマ
- 応用編:ケースを読んで設定するテーマ
- プロコース:クライアントに関するテーマ
という感じです。
こういう設定にしていると、「なぜ、やりやすそうなケースでのテーマを最初に持ってこないで、自分が関心あるテーマにするんですか?」という質問をいただくことがあります。
曰く、他のセミナーではケースを使っていて、しかも回答例のようなシナリオも見せてもらえてそれがわかりやすかったということです。
そういう設定のセミナーであればたしかに講師としてはとても楽チンですが(笑)、シナリオの「作り方」しか学ぶことができません。
もちろん、「作り方」を学ぶことも大切ですし、弊社の基礎編+実践編でも、丁寧にお伝えします。
しかし、最初にシナリオプランニングを学ぶタイミングでは「作り方」以上に大切なことがあるのです。
それは前回のメールマガジンでもお伝えしたこのことです。
シナリオプランニングで発想を広げるというのは、自分が認識している世界を自覚して、その世界から一歩踏み出してみること。」
( 参考:シナリオプランニングのワークショップで起きていること
http://www.stylishidea.co.jp/2018/08/23/newsletter-0181/ )
サラッと書いたこの文章ですが、実際にそれをやろうと思うととても難しい。
前半の「自分が認識している世界を自覚」するという部分、「自分の思い込みに気付く」とも言い換えられるこの部分が、特に難しいのです。
ただし、この難しさをイメージだけで理解するか、実感として実感するのかは大きな違いです。
(イメージと実感についても以前に書きました。
参考:未来についてのイメージだけでは不十分http://www.stylishidea.co.jp/2018/05/30/newsletter-0171/ )
そこで、この「自分の思い込みに気付く」ことを強く実感してもらうために、基礎編+実践編では自分が関心あるテーマでシナリオを作成します。
自分が関心ある、日頃から考えているテーマでも、それについての不確実な要因を考える、しかも1人で考えるというのは、なかなか難しいこと。
そういう難しさをとおして、
- いかに自分が「思い込み」にとらわれているか
- いかに「当たり前」と思っている範囲が狭いか
- いかに不確実なことを考えることが難しいか
というようなことを経験的に学んでいただきます。
こういうことに気がつき、だからこそ、不確実なことをチームや組織でみんなで考えていくことが大切なのだと実感を持って思ってもらうのが肝なのです。
この実感を持ってもらうことを優先することで、「作り方」の理解が中途半端になってしまうリスクがあるにはあります。
しかし、「作り方」はテキストを復習したり、市販の本を読んだりと、その気になればいろいろと学ぶ機会はあります。
しかし、自分の思い込みに気づき、それがチームや組織でも起きていることに気づき、どうにかしなければいけないという実感は、なかなか本などでは持つことができません。
初めて学ぶ人にとっては(そして講師にとっても)ケースで学ぶよりも難易度が高いものの、基礎編+実践編で自分の関心あるテーマでシナリオを作る理由はこういう背景からなのです。
『実践 シナリオ・プランニング』
シナリオ・プランニングを活用し、自分たちの「シナリオ」を作成することで、過度に悲観的な予測に立って不安に飲み込まれることも、将来の可能性を過度に楽観視することもなく、「健全な危機感」をもって未来を捉え、将来に対する備えをしていくことができるようになります。
本書ではシナリオ・プランニングの理論的な理解はもちろんのこと、シナリオ・プランニングの「実践」をあらゆる組織で無理なく進めていくための方法論、さらには、シナリオ・プランニングの「実践」をもとに、人と組織の成長を促すヒントを解き明かします。