富士山噴火の影響を考える(未来創造日誌 230104)

シナリオプランニングでリサーチをしていく場合、影響が大きすぎる要因の扱いは難しい。

不確実な将来の可能性を考えるものだからといって、やたらと影響が大きすぎる要因を軸にしてしまうことは、よほど特別な事情がない限り、避けた方が良い場合が多い。このあたりの詳細は拙著『実践 シナリオ・プランニング』の第6章 295ページ以降で詳しく解説している。

ただ、それはあくまでもシナリオプランニングのプロセス上の話。シナリオプランニング作成上のプロセスとしては避けた方が良いものであっても、企業としては「やたらと影響が大きすぎる要因」については、その影響範囲や対応の可能性を考えておかなければいけない。

そういうシナリオプランニングでは避けた方が良いかもしれないが、企業としてはある程度、その影響範囲などを考えておいた方が良い代表的なものに天災がある。

そのうち富士山噴火については成毛眞氏の『2040年の未来予測』でも紹介されていたので、ある程度の知識を持っている人もいるかもしれない。

自分も以前に成毛氏の本を読み、いつか自分でも調べてみたいと思っていたところ衆議院調査局が毎年年末に発行している「RESEARCH BUREAU 論究」の最新号(2022年末発行)に山梨県富士山科学研究所所長で東京大学名誉教授でもある藤井敏嗣氏の「富士山噴火に係る現状と対策」(リンク先はpdfファイル)という寄稿論文が載っていた。

12ページですぐに読み切れる内容であるものの富士山の噴火史から中長期予測、短期予測、そして影響や対策まで幅広い内容がわかりやすく解説されている。前提知識ゼロでもすっと読み切れる。

興味がある人は読んでいただくとして、赤ペンでチェックした部分をいくつか引用する。

まず、そもそもの位置づけについて、富士山は「活火山としては非常に若い」そうだ。

一般に我が国の火山は数十万年から 100 万年の間、噴火活動を行うことからすると、10万年前に活動を開始した富士山は活火山としては非常に若く、このまま噴火活動を停止するとは考えられない。

「富士山噴火に係る現状と対策」11〜12ページ

そして、噴火の予測については困難だと結論付けられている。

富士山の次の噴火がいつ頃になりそうかを噴火履歴から予測することは困難である。噴火に先駆けて、地震活動や地殻変動などの活動が生じるまでは、噴火時期について予測を行うことはできない。
富士山については、週刊誌などで XX 年 XX月に噴火するという記事が時折話題になるが、このような時期を指定した噴火予測などは意味がなく、根拠のない予言とみなして差し支えない。

「富士山噴火に係る現状と対策」12ページ

しかも、噴火の開始点の予測も難しいそうだ。

最近 2300 年間には 80 回ほどの噴火が生じているが、いずれも毎回異なる地点に火口を新たに作っている。このことが後に述べるように次期噴火の開始点の予測を困難にしている。噴火の前兆とみなせるような火山活動が見られない、非常に静穏な現時点では、次の噴火が山体のどこから発生するのか予測できないのである。

「富士山噴火に係る現状と対策」11ページ

これはいろいろなところで紹介されている話ではあるものの、噴火した際の火山灰の影響を見ると、改めておそろしいことになると感じる。

「富士山噴火に係る現状と対策」17ページ

時間がないという人は、前半の歴史の話などは飛ばして、後半の影響部分だけでも読むと良いかもしれないが、端的に言うと、富士山噴火の直接の影響と、上の図にある火山灰の影響によって、噴火したあとは、あらゆる経済活動が止まってしまう。

これはシナリオプランニングの検討に取り込まなくても、what ifの精神で、噴火が本当に起きたときの企業や個人としての影響を考えておくのは無駄ではないだろう。

最後に、富士山の話やシナリオプランニングからはそれるものの、国としてさまざまな記録を破棄したり、なかったことにすることの影響が、将来こんな形で出るのだろうかと危惧しながら読んだ一文を紹介。

1083 年の噴火と 1435 年の噴火の間の 350年間は噴火の記録がない。この時期には国内の安定政権が確立していなかったこともあり、信頼できる歴史書が極端に少ないので、この350 年間の噴火空白が事実なのか、あるいは単に記録されることがなかったのかは定かではないが、富士山の山腹に噴火年代の確定していない比較的若い溶岩流などが存在することから、この時期にも噴火があった可能性はあると考えられる。

「富士山噴火に係る現状と対策」11ページ