ネイサン・ファーと他者からの評価【未来創造日誌 200909】

DIAMONDハーバード・ビジネス・レビューのウェブサイトで毎月紹介されている[論文セレクション]注目著者というコーナーが面白くて、毎月目をとおしている。

経営や組織が考える必要があるテーマ(例えば2020年9月号の「戦略的に未来をマネジメントする方法」みたいなもの)を起点にしていろいろな論文を読むことは、そのテーマに関する多様な視点を一気に頭に入れることができるという点で面白い。

一方、[論文セレクション]注目著者のようにひとりの著者の思索の遍歴を、著者が発表した論文を時系列にたどりながら読んでいくのは、その著者の思索やテーマの深まり方、広がり方をたどることができて面白い。簡易版の全集を読んでいるような気持ちがする。

その注目著者シリーズの2020年8月号は、INSEAD准教授のネイサン・ファーだった。

実は2015年にネイサン・ファーの著書 Innovator’s Method を自分が翻訳して『成功するイノベーションは何が違うのか?』という邦題で出版している。

Amazonでのレビューは芳しくなく、批判的なレビューとして書かれている内容の中にはそのとおりだなと思うこともある。ただし、「寄せ集め」という批判は必ずしも的を射たものではなく、原題で method と謳っているので、こういう内容にはなるだろうとは思う。

このところ、イギリスの Design Council の Double Diamond なんかを元にして、シナリオプランニングを組み込んだ問題発見から事業案検討までの流れをうまくつくれないかと考えている。そういう中で、Double Diamond の解説なんかを読んでいても、ネイサン・ファーがこの本で伝えていたことは、我田引水っぽさが強いのは確かにそうだとしても、そんなに悪いものではないと今でも思う。

もちろん、こういう理論や方法論に対して、反対意見も含めて、いろいろな意見があるのは良いことだ。ただ、何件か書かれたレビューのうち、暗にネイサン・ファーが当時所属している大学が一流でないことを腐すようなコメントについては、今読んでもいただけないなと思う。

その後、ネイサン・ファーはINSEADでテニュアを持つ准教授に昇任している。もし、彼がこの本を書いたときにINSEADにいれば、周りの評価も違っていたのだろうか。

いずれにせよ、本論とは関係ないところでの他人の評価に振り回されるものではないなと思う。

先のDIAMONDハーバード・ビジネス・レビューのネイサン・ファーの特集記事の最後にのっている、彼の奥さんのコメントを読んでいると、周りがどう思おうが、本人(および周りの人)しかわからない苦労をしながらも、自分が大事だと思うことをやり続けることほど大切なことはないと思うのだ。

“Nathan “got tenure” at INSEAD last month. The 15 years journey from day one of PhD in September 2004 to that news on June 20, 2019 calls for some massively earnest celebrations. It’s been fun to dream and scheme about what could really usher in this new phase for our whole family.”

(ネイサンは先月、INSEADで「テニュア(終身在職権)」を得ました。 2004年9月にスタンフォードの博士課程に進学した日から、2019年6月20日の〈准教授に昇任した〉ニュースを聞く日までに過ごした15年間の人生には、熱狂的な祝福が必要です。新たなフェーズを迎えることへの夢とプランを描けるのは、私たち家族全員にとって喜ばしいことです)

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