"ワクワクしない世界"でワクワクする【未来創造日誌 200908】

これまで対面でシナリオプランニングの研修やワークショップをやり続けてきたけれど、コロナ以降は、それがすっかりオンラインになってしまった。

いろんなところに出かけて、直接いろいろな人と会うことは極端に減ってしまったが、このところコラボで企画を考えるという機会が増えている。もちろん打合せをするのは主にオンライン。定期的に打合せを持って進めているもので5件。どの企画でも、今のような不確実な時代にシナリオプランニングをどのように活用できるのかを考えるのが自分の役割だ。

今日はそのうちのひとつの打合せ。

そこで自分が話したのは、「(2軸を使ってできる4つの世界のうち)その人にとって一番イヤだなと思う世界を考える時間を半ば強制的に取るというのはどうか」という話。

いろいろな機会でシナリオプランニングを活用して、複数の世界を描き、「この世界になったら自社/自分はどうする?」という対話をとおして未来についての理解を深めていくけど、本当に盛り上がるのは、自社や自分にとって理想的なシナリオ(未来の世界)について話す時ではなく、実は、自社や自分にとって一番イヤだと思うシナリオについて話をする時の方なのだ。

一番イヤな世界で考えることになるから、当然、最初からワクワクして対話をするなんてことはない。

しかし、最初は「うわぁ、こういう世界になったら、自社っていらなくなっちゃうんじゃない?」としか思えない世界で、「じゃあ、こういう世界になったら、自分たちはどうするのか?」と考え出すことで、

  • 自分たちは何者なのか?何ができるのか?
  • 自分たちは何を大切な価値だと思っているのか?
  • 世の中がどうなろうと、自分たちがやりたいことは何なのか?

みたいなことを考えだし、自然と自分たちの根っこの部分に対話が降りていく。

何の前提も設けずに自社や自分にとってワクワクする世界を考えることには意味があると思うし、自社が設計するワークショップに、そういう機会を取り入れることもある。

ただ、現実的には「外部環境」という影響からは、どうやっても逃れることはできない。逃れられない、そして自社や自分ではコントロールできない外部環境が変化する可能性を考えていくと、自社や自分にとって都合が良いところがほとんど見つからないようなシナリオが出てくることがある。

そういうシナリオを前に、イヤだと思いながらも、上に書いたような問いについて考え続けていくことで、うわべだけではない、静かだけど、フツフツとわいてくるような確かなエネルギーを感じられる場面がある。そのエネルギーがどんなものなのかを表現するのであれば、ワクワクという表現が当てはまるのかもしれない。

ワクワクすることを目的にしたワークショップも良いけれど、イヤな世界を目の前にして考え続け、それをとおして自分たちの揺るぎない価値観にたどりつき、結果としてワクワクを感じることができるのが、シナリオプランニングに取り組む醍醐味だなと思う。

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