顧客の言葉で、具体的に(プロダクトマネジメントの現場から)

09.17


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それは誰が考える強みなのか?

東京都大田区に経済産業省「IT経営実践企業」や大田区「優工場」などに認定されている加工メーカーであるダイヤ精機があります。

ダイヤ精機株式会社|精密金属加工メーカー(東京都大田区)

同社の社長を務めているのが諏訪貴子さん。2004年、急逝した父の後を継いで同社に入社し、代表取締役に就任しています。

彼女が社長になってすぐに取り組んだことについて、次のようなエピソードがあります。

 私は社長になってすぐにSWOT分析をし、うちの強みは「技術力」だと思いました。ある方にお話しすると、「それはあなたの目線でしょ。お客さんはどう思っているの?」と聞かれ、私は何も答えられませんでした。
次の日、あるお客様を訪ねて「どうして仕事をくれるのですか」と聞いてみたのです。すると笑いながら、その理由を教えてくれました。「こうやって毎日来てくれますよね。特急対応もしてくれるし、困っているときには相談にも乗ってくれる」。これを聞いてハッと気付いたのです、うちの強みは「対応力」にある、と。
もちろん、「技術力」は大前提。その上で、対応力を磨くにはどうしたらよいのか。

これは「日経ものづくり」2014年5月号の「未来を引き寄せる至言集」という特集の中で紹介されていた諏訪社長の言葉です。

引用した文は長くはありませんが、ここだけでも、たくさんのことを学ぶことができます。

中でも特に参考になるのは「顧客から見た自社」という視点です。

顧客にとってのメリットは何か

諏訪社長は、自社を中から見て、自分たちの強みを「技術力」と考えました。

しかし、ある方によって指摘されるように、それはあくまで自分たちが考える視点であって、顧客がそう考えているとは限りません。

顧客によっては、その会社が高い技術力を持っていることや、どんな技術を活用しているのかなどは、まったく関係も、関心もないことです。

では、彼らにとっての関心は何かというと、「自分にとってのメリットは何か」ということ。マーケティングの本などを読むと、これは顧客にとっての「ベネフィット」なのだという言い方をしています。

例えば2001年に発売された初代のiPod。当時は、文字どおり桁違いの容量(5GB)を持つMP3プレイヤーとして登場したiPodのことを伝えるために、当時のジョブズは

あなたが持っている音楽ライブラリーをすべてを持ち歩ける

という言い方をしました。これが、顧客にとってのメリット、つまりベネフィットです。

これを

iPodは、一般的な128MB MP3プレイヤーの40倍の容量!

と言っていたらどうでしょうか。

もちろん、当時のMP3プレイヤーで5GBというのは、かなりの容量だったので、ジョブズもそういう言い方はしていたのかもしれません。

しかし、なぜ「音楽ライブラリーをすべてを持ち歩ける」というメッセージの方が記憶に残るかというと、それが顧客にとっての具体的なメリットだったからです。

ベネフィットは顧客の言葉で、具体的に

ビジネスの現場では、例えば会議や上司への報告の機会では、なるべく簡潔に情報を伝えることが良いとされています。

そのためには、自分が持っている情報の細かい要素は思い切って捨ててしまい、抽象度を上げた状態で整理をします。

しかし、その過程で捨てられてしまっている情報にこそ、顧客を理解するために本当に必要な情報が込められているかもしれません。

例えば冒頭で紹介したダイヤ精機の場合で言えば、「対応力」という言葉からは、

  • 毎日来てくれる
  • 特急対応をしてくれる
  • 相談に乗ってくれる

という、顧客が感じている具体的なベネフィットが伝わってきません。

顧客の言葉は、自社のベネフィットや課題を知るための貴重な情報源。

効率的に伝えるためには、抽象度を上げて整理することも大切ですが、同時に、こういった「宝の山」を捨ててしまわず、いつでも確認できるような工夫も必要ですね。

photo credit: 10ch via photopin cc

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