シナリオで何年先を見据えるのか(シナリオプランニングの現場から)

06.25


※最新のアイデアノートの他、セミナー情報などの株式会社スタイリッシュ・アイデア最新情報を盛り込んだStylish Ideaニューズレター、購読者受付中!

「青空シナリオ」

シナリオプランニングのご紹介をしていると、何か良い事例はないのかというお話しをいただくことがあります。

もう少し詳しく事情をうかがってみると、有名なシェルの事例は難解すぎるし、『シナリオ・プランニング』の本も買ってChapter 3以降の事例も頑張って読んでみたものの、テーマが大きすぎて、読んでいて、なかなか実感がわかないという声を聞くことが少なくありません。

4862761658

そういう時、ある程度、実感を持ってもらいやすい事例として「東京未来シナリオ2035」というものをご紹介しています。

これは森記念財団の調査として行われたもので、竹中平蔵氏を全体統括として、2010年に行われた25年先のシナリオを描こうというプロジェクトです。

東京未来シナリオ2035 – 調査・研究|財団法人 森記念財団

上記のページを見ていただくとわかるように、2035年の東京のシナリオとして、【青空】、【曇天】、【長雨】、そして【豪雨】というタイトルをつけた4つのシナリオを作成しています。

セミナーなどでは、このうち一番暗い【豪雨シナリオ】をご紹介することが多いのですが、今回は一番良い【青空シナリオ】をご紹介します。

作成したシナリオのプレゼンテーションの例という意味では、とても良いものですし、シナリオ自体も作り込まれています。

ただ一方で、この【青空シナリオ】は特にストーリーに入り込むのが(個人的には)難しいと感じています。

未来を語る言葉

最初はなかなかその理由がわからなかったのですが、何度か見ているうちに、それがわかりました。

例えば冒頭で出てくる「ユビキタス」という言葉。そして、「ICT」や「バーチャル」といった言葉。こういう言葉から、個人としてではありますが、あまり「未来」を感じないのです。

むしろ、これが作成された2010年という時期を考えると、今まさに起きていることを表す言葉という感じがします。

それはもちろん、わたしがそういう分野になじみがあるからというのも大きな理由だとはあります。

一方で、「今の言葉」を使って「未来を語る」ことの難しさを感じるきっかけとなったシナリオでもあります。

例えば「バーチャル」という言葉。東京シナリオと同じ25年という期間をさかのぼると、時は1989年。

その時代から見れば、今のようにソーシャルメディアで地域や国をまたがってメッセージ機能でやり取りができ、ともすればそのやり取りだけでどんどん仕事が生まれ、進んでいくという世界はまさにバーチャルの世界でしょう。

しかし、今のわたしたちにとって、それはもはやリアルな世界といっても良いかもしれません。

このように、同じ言葉でも時代によってとらえ方が変わりますし、そのような概念とそれを表す言葉(例えばソーシャルメディア)がない状態では、未来を言葉で表すというのは簡単ではありません。

これはある意味シナリオプラニングの限界なのかもしれません。

なぜ10年先を見るのか?

では、シナリオプラニングは現実味のない未来を描く、単なるツールなのかと言うと、それは違うでしょう。

個人的には、特に個人や企業でやる場合、20年や25年といったあまりにも遠い先のシナリオを作ることはお薦めしていません。

そこまで先になってしまうと、これまで書いたような未来を描写する際の限界につまづきやすくなるというのと、作っている途中で「そんな先のことはわからない」という感情が生まれ、シナリオの作成が惰性におちいる可能性が出てきてしまうからです。

何年先のシナリオを描くということを決めるのは、もしかすると、そこまで重要なことではないのかもしれません。

このように書くと元も子もないような感じですが、近すぎず、遠すぎずといった期間を設定しさえすれば良いのではないかと思うのです。

近すぎれば、それはシナリオではなく、ある程度予想の範囲で、しかもコントロールできるような身近な世界を描くようになってしまいます。これまである中期経営計画や予算策定の作業との差がなくなってしまいかねません。

一方で遠すぎれば、それはあまりに現実味が薄いものになってしまう可能性が非常に高くなります。今回ご紹介したシナリオのように自治体などの行政機関や、『シナリオ・プランニング』に載っているような業界団体によるシナリオだと良いのかもしれませんが、個人や企業にとっては、少々手に余る世界になってしまうのではないでしょうか。

わたしは、個人や企業にとっては一般的に10年という時間設定が良いとお伝えしていますが、それは「近すぎず、遠すぎず」の絶妙な長さだからです。

シナリオを作成する目的は、未来を現在の延長として、連続した時間の流れとして見るのを一度やめ、そういった制約から自由な状態で複数の未来を見ることです。

そのためには、実は10年後でなくても、9年後でも11年後でもそこは大きな問題ではありません。

たしかに現在からは離れているけれど、起こり得る世界を眺めることができるという長さであれば良く、そのちょうど良い塩梅が10年という時間なのではないかと思います。

ですので、実際のシナリオプラニングプロジェクトでは、長さをどうするのかということは軽視しないまでも、こだわりすぎず、より大切なのは、「未来からさかのぼって現在を見るのだ」という意義を、ぶらさずに念頭に置き続けることではないかと思います。

photo credit: Stuck in Customs via photopin cc

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

関連記事

公開セミナー開催予定

メールマガジン購読

未来を見据え、未来を創るためのビジネスの見方を学べるコラム「アイデアノート」や最新のセミナー情報などをお届けする「スタイリッシュ・アイデア ニューズレター」にご登録ください。

新刊のお知らせ

組織でイノベーションを起こすために必要な知識が詰まった『成功するイノベーションはなにが違うのか?』発売中

4798140570
ページ上部へ戻る