アイデアノート019「人は見たい未来しか見ない」

02.13


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前提となっている市場予測データに注意する

今日、日経ものづくりのメールマガジンに目を通すと、市場予測データについての記事がふたつあり、Facebookのシナリオプランニング実践会に投稿しました。

シナリオプラニング実践会

よくいろいろな記事やプレゼン資料で、市場予測データがそのまま掲載されていて「今後、市場はこのようになります…」という解説や説明がされていることがあります。

ただし、そういう説明や記事には注意が必要です。記事やプレゼンはそのデータを前提に話しが進んでいくことになりますが、本当にその前提で良いのでしょうか?

なぜなら実績に基づいたデータをまとめたものとは違い、予測データというのは、あくまで「その分野についてのひとつの見方」でしかないからです。

(もちろん、実績データもどの範囲を「実績」とするかで中身が違ってきますが、今回はひとまずその話しは置いておくことにします)

実際に同じ3Dプリンターをとっても、調査会社ごとにまったくと言って良いほど違った予測数値が出てきます。

そのうちのどれかを記事の書き手やプレゼンの話し手がなんらかの意図を持って選んでいるのだという注意がまずは必要です。

市場データの読み方

注意をするといっても、具体的に何をすれば良いかと言うと、その市場データに対する自分の立ち位置を決めるのです。

具体的には、そのデータを算出している背景は何か?そして、そのデータの根拠となっているのは何か?ということをまずは確認すると良いでしょう。

それぞれの詳しい説明は今回は省きますが、そういう視点で見ると、今回Facebookに投稿した記事のうち、こちらの記事が気になります。

シード・プランニング、農業IT化の市場規模を予測—2020年に580~600億円 – 産業動向 – Tech-On!

現在、IT各社は従来のように一般の企業で使われるようなソフトウェアやハードウェアを開発し、導入するだけではなく、これまであまりITが活用されてこなかったような分野にも導入しようとさまざまな試みを行っています。

そのうちのひとつが農業です。しかし、実際に農産物の生産者に直接営業をしている方や大学関係者の方、そして農産物生産者の方に直接話しを聞くと、可能性はあるものの
市場の伸びについては慎重な回答をする人の方が多いという実感がありました。

しかし、このリンク先のデータは見事な右肩上がりです。気になって、このデータの根拠となっている部分を探すと、記事中に次のようにありました。

調査は、調査対象企業(農業クラウドサービス/GPS ガイド・自動操舵/農業用センサで20社、産直 POS システムで11社)に対し、訪問による面談と電話による聞き取りを実施した。

ここからわかるように、このデータの元となっているのは、農業ITビジネスを推進している人、つまり提供者側だけです。利用者側は含まれていません。

「人は見たい未来しか見ない」

提供者側としては、当然のことながら、自分たちが扱う製品やサービスがうまくいってほしいと思っています。それは決して悪いことではなく、むしろ当然のことでしょう。

しかし、「うまくいってほしいと思う」のと「楽観的な未来を描く」ことはまったく別の話しです。

通常、自分の未来の悪い可能性だけを見続ける人はいません。むしろあえて悪い可能性は見ないようにしてしまうのが人間です。

さらに、そこに「メンツ」というものが絡めば、その傾向は一層強化されます。今回の場合、それぞれの企業の農業ITの担当者にヒアリングをしたということなので、ある意味、その人はその企業を「代表」していることになるわけです。その場面で適当なことは言わないまでも、悲観的な話しばかりをすることはあまり考えられません。

そういうことを踏まえると、この調査データは相当慎重に見なければいけないことがわかります。

このような調査データを見ていると、シナリオプランニングでよく言われる「人は見たい未来しか見ない」という人間の根っこにある部分を垣間見るような気がします。

人は予測をする、あるいは想像をするというくらいでは不確実なことまで見据えるのは難しいのかもしれません。「妄想する」と言った方がちょうど良いほど、人間は未来に
ついて楽観的に考えるところがあるのかもしれません。

そう考えると、半強制的に不確実な未来を考えるためのシナリオプランニングというツールは、改めてこれからの時代に必要なものかもしれませんね。

「人は見たい未来しか見ない」を理解するためのブックガイド
今日書いたようなことを踏まえながら、昨年に出た『シナリオ・プランニング』を読み返してみると、新たな発見があるかもしれません。

・『シナリオ・プランニング — 未来を描き、創造する
4862761658

また、今日取り上げたような調査データを読み解くには、調査するプロセスを知るのが手っ取り早いです。そんな時にオススメなのがこちら。

・『情報調査力のプロフェッショナル – ビジネスの質を高める「調べる力」
4478490538

リサーチャーと呼ばれる人たちがどういう頭の使い方をしているのかを知ることができる一冊です。

photo credit: kenteegardin via photopin cc

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