アイデアノート009「顧客はどこにいった?」(プロダクトマネジメント003)

09.02


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ビジネスモデルを考える上で外せない要素

前回のメールマガジンでは「ビジネスモデルの仕掛けと仕組み」というテーマのアイデアノートをご紹介しました。

アイデアノート008「ビジネスモデルの仕掛けと仕組み」(プロダクトマネジメント002)

ここで話しのきっかけとしたのが、最近人気の『ビジネスモデル・ジェネレーション』です。

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私自身も企業向けや個人向けのワークショップなどで、ビジネスモデル・キャンバスを使うことがあります。たしかにやっていて楽しい感じはありますが、そこから何かの成果をきちんと出さなくてはと考えると、いろいろなことを考えなければなりません。

中でも、大切なのが「顧客」です。ビジネスは、当然、顧客がいなければ成り立ちません。ビジネスモデル・キャンバスを埋めていく作業では、「顧客セグメント」の部分と「価値提案」の部分を埋めることが何よりも重要で、そして難しい。

そこで、今回はこの悩ましい「顧客」の存在を考えていくことにしましょう。

顧客は何が欲しいのか?

まず顧客を考える上で、個人向け(B2C)か企業向け(B2B)かという区分けは、多くの人が最初に思い浮かべます。これらは、もちろん細かく見ていけばいろいろな違いはありますが、顧客を正しく理解する過程での根本的な違いはないので、今回は明確には区別しないで取り扱います。

なるべく具体的に話しを進めるために、皆さんが日頃かかわっていらっしゃるお客さまをなるべく具体的に思い浮かべてください。特定の誰かが良いですね。

では、そのお客さまは何が欲しいのでしょうか?

これに答えようとすると、まず自社の製品やサービスを始めに思い浮かべたという人も少なくないでしょう。

しかし、それは本当でしょうか?

もちろん顧客が直接対価を払うのは具体的な製品だったり、サービスです。しかし、顧客が「本当に」必要としているものは、必ずしも、その製品やサービス自体ではないかもしれません。

多くの人が有名なドリルのたとえを聞いたことがあるかもしれません。「ドリルを買う人はドリルが欲しいのではない。それによってあける穴が欲しいのだ」というものです。

これは言い換えれば「モノ」ではなく、そのモノによって実現される具体的な「用途」を顧客は欲しているということです。

「用事」を片付けるために「雇う」

これをより掘り下げて考えたのが、『イノベーションのジレンマ』などで知られているクレイトン・クリステンセンです。

彼は『イノベーションのジレンマ』に続く『イノベーションへの解』において、このような「用途」のことを「片付けるべき用事(job-to-be-done)」、あるいは単純に「用事」と呼びました。

そして、顧客はこの「用事」を片付けるために、製品やサービスを「雇う」のだという考えを紹介しました。

例えば『イノベーションへの解』では、自動車での長い通勤時間の退屈やイライラを紛らわすという「用事」のためにミルクシェークを「雇う」ということが紹介されています。

また先ほどのドリルの例では、自宅にある板状のものに穴をあけるという「用事」を片付けるためにドリルを「雇う」という選択をしているわけです。

だから製品から考え出してはいけない

このように考えると、たしかに製品やサービス単体で考えていては十分ではないということに気がつきます。

自分たちがリソースとして持っている技術や人材などを前提として「こういうものが作れる、提供できる」と考えてみたり、競合企業が提供しているものを見て、それに対抗するような製品やサービスのアイデアを考えてみたりしているだけでは、本当に顧客が必要なものを生み出し、提供できているかどうかはわかりません。

そうではなくて、顧客が片付けようとしている「用事」は何なのか、そのためにどんなものを「雇う」可能性があるだろうかということから考え始めることが肝要です。

そう考えると、先ほどの有名なドリルの例は、顧客にとって本当にドリルが必要なのだろうかと、考えを進めてみることもできます。

顧客は穴をあけるという「用事」を済ませるためにドリルを「雇う」と言われていますが、実際に顧客が必要としているものが穴のあいた板状のものであれば、最初から穴があいた状態の板を売れば良いのではないかと考える。

そもそも、顧客はその板を買って何をするのか?と考え出すと、もしかすると、穴があいた板を売るよりももっと良い「用事」の片付け方があるのかもしれない…というように、考えは止めどなく浮かんできます。

顧客を理解するための態度

弊社毎月開催している2200 Lab というセミナーの第1回では、ホスピタリティをテーマとして取り上げました。その時は「配慮」をすることについて学びましたが、配慮する際のポイントのひとつは、「相手以上に相手のことを考える」ということ。

これはここまで話した顧客理解の態度にも当てはまります。

ドリルを求めている顧客を例に取れば、はじめはドリルの技術的なことを考えていたかもしれませんが、ひとたび「用事」を考えると穴をあけることが必要だというように考えが深まります。ただ、そこで止めるのではなく「なぜ穴をあけたいのか?」と考え出すと、最初から穴があいた板を提供するということば浮かびます。

そしてここでも止めず「なぜ穴があいた板が必要なのか?」ということを考え、そこからどんどん深めていくと、顧客はDIY代行サービスのようなものを欲しているのではないのかという仮説に行き着くかもしれません。

このような「相手以上に相手のことを考える」作業をひたすら行った上で、実際に顧客を観察に行くのが効果的です。『イノベーションへの解』では、顧客を観察することの大切さを説いていますが、ただ漫然と観察しにいくだけでは、得るものは少ないかもしれません。

そこで事前にこのように「相手以上に相手のことを考える」作業を行うことで、より深い観察ができるようになるはずです。

ちなみに「相手以上に相手のことを考える」ことをしている時、私は常に次のふたつの言葉を頭の中でつぶやきながら作業をしています。

  • それは本当か?
  • それで全てか?

ロジカルシンキングの手法としてさまざまなものが紹介されていますが、ここで挙げたふたつの言葉は、いわばロジカルシンキングをする際の「態度」ともべきいうもの。

ぜひ、このふたつの言葉を頭の片隅に置きながら、顧客の「用事」を片付けるために「雇われる」ものは何なのかを考え続けて下さい。

「顧客はどこにいった?」を理解するためのブックガイド
今回のアイデアノートのベースとなったのは、本文中でも何度か紹
介しているクリステンセンの『イノベーションへの解』です。

・『イノベーションへの解
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その後出た『イノベーションへの解 実践編』は、クリステンセン氏
が直接かかわっている本ではありませんが(序文のみ)、タイトルの通り、より実践を意識した内容になっています。

・『イノベーションへの解 実践編
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顧客の理解をするという視点でまとまっている日本人の著者による本の中では佐藤義典氏の一連の著作がお薦めですが、中でも、この『事例でわかる!実戦BtoBマーケティング』はB2Bと銘打っているものの、誰にでもお薦めできる一冊です。

・『事例でわかる!実戦BtoBマーケティング お客様に頼られる存在になるための戦略実行
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またビジネスモデルとの関連で言えば、『なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編』がお薦めです。特に本書の第3章は、顧客を見る新しい視点を得るためにはお薦めです。

・『なぜ、あの会社は儲かるのか? ビジネスモデル編
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photo credit: Giridhar-Photography via photopin cc

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